東京地方裁判所 平成4年(ル)3250号 決定 1992年6月26日
当事者 別紙記載のとおり
請求債権 別紙記載のとおり
主文
一 債権者の申立てにより、上記請求債権の弁済に充てるため、別紙請求債権目録記載の執行力ある債務名義の正本に基づき、債務者が有する別紙株式目録記載の株式(株式会社である第三債務者の株式であって、未だ株券が発行されず債務者に交付されていないものをいう。差押えの対象には、株主の権利である株券発行、株券交付、利益配当等の各請求権を含む)を差し押さえる。
二 債務者は、前項により差し押さえられた株式について、譲渡並びに株券発行、株券交付及び利益配当等の各請求権の行使、その他の処分をしてはならない。
三 第三債務者は第一項により差し押さえられた株式について、債務者に対して、名義書換及び株券の交付、利益の配当等をしてはならない。
理由
本件は、発行会社が株券を発行していない株式の差押えを求める事件である。
発行会社が株券を発行していない場合には、株主は、株券を交付しなくとも株式を譲渡することが可能な場合がある。また、株主の有する株券発行請求権を債権者が取立権に基づき行使するには、株式自体を差し押さえることが必要である。したがって、強制執行の要件が満たされている場合に、債権者が、株券の発行されていない株式について、株券の交付請求権のみでなく、株式自体の差押えを求めることは理由があり、民事執行法一六七条により、これを認容するべきである。
記録によれば、債権者の本件強制執行は、執行の要件を充足するものである。そこで、債権者の株式差押えの申立てを容認することとする。
株式を差し押さえる命令は、株主がその地位に基づいて有する株券の発行請求権、株券の交付請求権及び利益配当請求権をも差し押さえる効力を有する。そして、株式が差し押さえられ取立権が生じると、債権者は、その取立権に基づき株主の有する株券発行請求権を行使することができる。
したがって、債権者は、この命令が債務者に送達された日から一週間を経過したときは、民事執行法一六七条によりその例によるものとされる同法一五五条一項及び一六三条一項に基づき、第三債務者に対して、株券を発行し、債権者の申立てを受けた執行官に株券を引き渡すべきことを請求することができる(任意に引渡しが得られないときは、取立訴訟により株券の発行及び交付を求めることとなる)。
そして、執行官は、株券の引渡しを受けたときは、民事執行法一六三条二項により、動産執行の売却の手続によりこれを売却し、その売得金を執行裁判所に提出し、執行裁判所が債権者に配当することとなる。
なお、上記の取立が困難なときは、民事執行法一六七条によりその例によるものとされる同法一六一条に基づき、債権者は、譲渡命令等による株式の換価を求めることができる。
(裁判官淺生重機)
別紙当事者目録
債権者 日本ランディック株式会社
代表者代表取締役 西山榮一
債権者代理人弁護士 伴義聖
債務者 佐藤英訓
第三者債務者 株式会社トルド
代表者代表取締役 中川一郎
別紙請求債権目録
東京法務局所属公証人井出昭正作成平成四年一〇三七号債務弁済契約公正証書の執行力のある正本に表示された下記金額
(1) 元本金一、二四六、五九七、五〇〇円
ただし、債権者が株式会社朋和に対し貸付けた下記の貸付金元本合計額につき、債務者が債権者に対し上記公正証書により諾約した連帯保証契約に基づく履行請求権
記
(イ) 平成3年5月2日金銭消費貸借契約証書に基づく金三一〇、〇〇〇、〇〇〇円
(ロ) 平成3年6月18日付分割貸付契約証書に基づく金七三〇、〇〇〇、〇〇〇円
(ハ) 平成4年4月20日付金銭貸付契約証書に基づく金九六、一三〇、〇〇〇円
(ニ) 平成4年4月23日付金銭貸付契約証書に基づく金一一〇、四六七、五〇〇円
(2) 損害金 金二〇、二三一、六六四円
ただし、平成四年五月一日から同年六月二日まで年一八パーセントの割合による損害金
合計 金一、二六六、八二九、一六四円
別紙株式目録
債務者が第三債務者(株式会社)に対して、同社の株主として有する株式(一株の金額金五〇、〇〇〇円)合計三八株